ヤマサギソウ(山鷺草、学名:Platanthera mandarinorum subsp. mandarinorum var. oreades)は、ラン科ツレサギソウ属の地生の多年草。

特徴

根の一部は紡錘状に肥厚する。茎は直立し、高さは20-40cmになり、やや縦の稜がある。葉は最下部の1個が大きく、狭長楕円形から線状長楕円形で、長さ5-11cm、幅1-1.5cmになる。その上に2-5個の鱗片葉があり、披針形になる。

花期は5-7月。総状花序に淡黄緑色の花を5-15個つける。苞は披針形。背萼片は卵形から広卵形で長さ3-5mm、幅2.5-4mm。側萼片は披針形で背萼片より長い。側花弁は鎌形で背萼片より少し長く、上方に伸びる。唇弁はやや肉質、舌状で長さ10-15mmになり、先細となって下垂する。距は長さ7-12mmになり、後方に水平またはやや下方に伸びる。蕊柱は平らで葯隔は広く、葯室は左右に平行する。花粉塊は広倒卵形で、淡黄色をしている。

ヤガ科のミツモンキンウワバが訪花し、花粉を運ぶ。基本種のハシナガヤマサギソウは距が25-35mmと長く、後方に水平に伸び、互いに変種関係にあるマイサギソウは距が11-18mmとやや長く、上方に舞い上がることから区別できる。ただし、変異が連続的で同定が難しい個体もあるという。

分布と生育環境

日本では、北海道、本州、四国、九州に分布し、冷温帯から暖温帯の日当たりのよい草地や湿地に生育する。国外では、朝鮮半島に分布する。

名前の由来

和名ヤマサギソウは「山鷺草」の意で、花をサギに見立てて山地に生えることによる。

ギャラリー

種内分類

種内変異が多く、変異が連続的で同定が困難な個体もあるという。

  • ハシナガヤマサギソウ(嘴長山鷺草)Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. mandarinorum var. mandarinorum - 学名のとおり、本種の基準亜種であり、基準変種である。茎の高さは20-50cm。背萼片は広卵形で長さ4.5-7.5mm。距は長さ25-35mmと長く、後方に水平に伸びる。本州(西部)、四国、九州に分布し、暖温帯のやや乾いた草地、しばしば石灰岩地に生育する。国外では朝鮮半島、中国大陸に分布する。
  • マイサギソウ(舞鷺草)Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. mandarinorum var. neglecta (Schltr.) F.Maek. ex K.Inoue - 茎の高さは20-50cm。背萼片は広卵形から円形で長さ3.5-5.5mm。距は長さ11-18mmとやや長く、上方に伸びる。北海道、本州、四国、九州に分布し、冷温帯から暖温帯の明るい草原や湿原に生育する。国外では朝鮮半島、中国大陸に分布する。
  • マンシュウヤマサギソウ(満州山鷺草) Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. maximowicziana (Schltr.) K.Inoue var. cornu-bovis (Nevski) Kitag.。
  • アマミトンボ(奄美蜻蛉)Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. hachijoensis (Honda) Murata var. amamiana (Ohwi) K.Inoue - ハチジョウチドリに似るが、苞の長さが花柄子房と同長か短い。奄美大島固有種 。絶滅危惧II類(VU)(2017年、環境省)。
  • ヤクシマトンボ(屋久島蜻蛉)Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. hachijoensis (Honda) Murata var. masamunei K.Inoue - 別名、アマミトンボモドキ。絶滅危惧IA類(CR)(2017年、環境省)。

脚注

参考文献

  • 中島睦子著『日本ラン科植物図譜』、2012年、文一総合出版
  • 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』、2015年、平凡社
  • 遊川知久解説他『日本のランハンドブック1 低地・低山編』、2015年、文一総合出版
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  • 日本のレッドデータ検索システム

ヤマサギソウ

オオヤマサギソウ 礼文島植物図鑑

オオヤマサギソウ

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